アメリカ鉄道巡りS

ヴェルデキャニオン鉄道
Verde Canyon Railroad

 

 

 

 


 

場所:アリゾナ州クラークデール

 

フラッグスタッフから州道89号線を南下すると、日光いろは坂のような道路を経てオーククリークキャニオンに入り、谷間を抜けるとセドナという町に着く。セドナについては「パパの趣味の世界・ビール編」の「灼熱のアリゾナに地ビールを求めて」で詳しく紹介しているのでそちらも参照されたい。ボク達が2泊したホテル「Inn of Sedona」は、客室のドア前がテラスになっていて、そこからはセドナの奇岩群が一望できる絶好のロケーションである。また、このホテルのウェブサイトを閲覧すると、今回紹介するヴェルデキャニオン鉄道の「Twilight Train(黄昏列車ツアー)」とセットになった宿泊パッケージがオンラインで予約できるようになっていた。ヴェルデキャニオン鉄道の列車ツアーは通常午前11時出発、午後3時終了の日中4時間ツアーであるが、夏の週末だけ夕方5時30分から運行し、往路は夕日に染まるヴェルデキャニオンのメサ、ビュート群、谷間を流れるヴェルデ川に沿って発達した緑の林の中を往来するピューマやエルク、放牧されている牛や馬、そして谷間を高く飛ぶゴールデンイーグル等を観賞し、復路や町の灯りに邪魔されることなく、夜空に輝く星を眺めるというロマンチックなツアーを主催している。牽引するのは蒸気ではなくディーゼル機関車であるが、ファーストクラス、コーチの他に、野外観覧車が3〜4台繋がれていて、気が向けば野外観覧車両に行って空や自然を眺めることができるのである。

 

この列車ツアーのファーストクラスとのパッケージで、大人2人(子供は無料)で約300j、しかも、このパッケージには50j以上するウェルカムドリンク(シャンパン)とチョコレートの詰め合わせが付く。テラスからの景色も含め、他の方にも是非お薦めしたいホテルである。

 

おっと話が若干脱線した。ヴェルデキャニオン鉄道は、89号線をセドナからさらに20マイルほど南下したクラークデールという小さな町にある。鉄道駅以外殆ど何もないようなところで、この町を起点にヴェルデキャニオンの渓谷を上流に遡り、今や廃駅となったパーキンスビルまでの片道20マイル、合計4時間の列車の旅である。所要時間4時間というのはおそらく観光目的の列車ツアーとしては最長の部類に入るし、牽引するのが蒸気機関車でない点では魅力に劣るかもしれないが、西部の自然を満喫しつつ乗る旅は非常に稀であり、この鉄道の価値は大きいと思う。グランドキャニオン鉄道が、乗った列車が目的地に到着して、その先にある観光地の素晴らしさによって付加価値を生み出しているのに対して、ヴェルデキャニオン鉄道は列車の旅自体がとても素晴らしい。アメリカで列車ツアーに参加するのは家族も自分も含めて今回が最後になると思うが、フィナーレを飾るのにふさわしい観光鉄道であった。ボク達の乗ったファーストクラスは、ソファーにゆったりと座り、各客車に乗務員が1名張り付いて、乗客の世話をしてくれる。先ずは最初のソフトドリンク1杯を無料で持って来てくれ、続いて各乗客から注文を取り、カクテルやビール、スムージー、コーヒー、お茶等を有料で持って来てくれる。くつろぎの旅なので、思いの外時間は短く感じる。このツアーは軽食付きで、各車両備え付けのビュッフェでスナック類を自由に取ることもできる。

 

勿論、景観を愛でるためには屋根のない観覧車に行ってみるとよい。先住民族の遺跡だとか、ゴールデンイーグルの巣とか、木製の「鉄橋(?)」だとか、ガイドがいろいろと説明してくれる。日が暮れてしまうと、谷間の鉄道は暗闇の中を走り続けることになる。ボクたちが訪れた日は既に満月に近く、月が明るすぎて星が見にくかったが、それでもさそり座とアンタレス、北斗七星等はよく見ることができた。月明かりにぼーっと浮かぶ渓谷の地形にも感動させられる。

 

また、ボクたちは、AAAでグランドキャニオン鉄道の渓谷観賞ツアーパッケージに登録し、実際にウィリアムズのホテルに到着した際にもらった何枚かの割引クーポンの中に、ヴェルデキャニオン鉄道のプロモーションビデオ18分16j弱の代物を無料でもらえる実にお得なクーポンがあった。さっそくクラークデール駅の駅舎内のギフトショップで提示すると、本当に18分構成のビデオをただでもらえる。とてもお得である。

 

アメリカ生活で経験する観光列車ツアーはヴェルデキャニオン鉄道で最後になるが、最後に来て最も見ごたえのあるツアーを経験したように思う。夏のヴェルデキャニオンの列車ツアーに匹敵するのは東部の紅葉の季節に森の中を抜けて走る列車ツアーなのだが、残念ながら紅葉の季節に列車に乗れたツアーは殆ど経験していない。ひょっとしたらこれで列車ツアー参加は本当に最後かもしれない。アメリカを再び訪れる機会がない限り、このような旅は二度と満喫することはないだろう。そう考えると少し寂しい気がするが、考えてみたら樹生も間もなく小学生、「機関車トーマス」のビデオや京王線旅客列車を聖蹟桜ヶ丘駅近くの多摩川堤防から何度も見せていた頃から既に5年も経過している。親子ともども、そろそろ鉄道から足を洗う時期が来たのではないか。

Inn of Sedonaのウェブサイトはこちら!

ヴェルデキャニオン鉄道のウェブサイトはこちら!

 

(2003年8月10日)