インクラインド・プレイン紹介@

モンチ・セハー
Monte Serrat

 

 

 

 


場所:サントス(ブラジル)

アクセス:サンパウロから車で約1時間

 

はじめに、いきなり取り上げたのがアメリカではなくブラジルになってしまったことをご容赦下さい。たまたまインクラインドに初めて乗ったのがブラジルのサントス港だったというわけです。これからアメリカ国内のインクラインドにもできるだけ乗ってみたいと思っています。

 

さて、本日紹介する「モンチ・セハー」だが、日本の観光ガイド「地球の歩き方」では、「モンテ・セハート」と紹介されているようだ。でも、現地の人の発音を聞いていると、「モンチ・セハー」に近いような気がしたのでそちらを使わせていただきたい。ブラジル一の陸揚げ高を誇るサントス港を見下ろすこの丘は、サンパウロから車で1時間ほどで行くことができる。地図で見るとサンパウロという大都市は海のすぐそばにあるように思われるかもしれないが、実は40kmぐらい離れていて、サンパウロの海抜は800mぐらいある。サンパウロを出て「移民街道」と呼ばれるハイウェイを走ると、最初の40分くらいは、ほとんど海抜が変わらない。ということは、最後の20分ぐらいで一気に800mを下ることになる。日光いろは坂ほどの低速ワインディング道路ではなく、むしろ箱根から小田原への山下りに近い。そして、渓谷を一気に下ると、そこがサントスの町である。

 

サントスは、日本には非常に縁がある町である。最初の日系ブラジル移民団を乗せた笠戸丸が、1908年に到着したのがサントス14番埠頭なのである。そして、多くの移民と同様、サントスに着いた日系移民は、「移民街道」をサンパウロへと向かった。(昔、日系人支援のお仕事をしていたうちのママは、1994年に出張でサントスに来たことがある。ママに聞いても覚えていないみたいだが、多分モンチ・セハーにも上ったことがあるのではないかと思う。)

 

モンチ・セハーのインクラインドは、観光用のケーブルカーではない。というか、おそらくボクが知っているインクラインドは殆どが観光用ではなく、人々の生活に必要だから急な斜面を一気に登れるインフラが必要だったのだ。では、モンチ・セハーの場合は、丘の上に何があるのだろうか。実は、それは教会である。願掛けで知られる教会が丘の上にあり、そこを訪れる信者の便宜のために、このインクラインドは建設されたのである。讃岐の金毘羅さんの参道の石段の代わりに、こんなケーブルカーを作ってみたら、参拝はもっと楽にできるようになるだろう。教会の正面から急激に坂を下っていく階段を眺めながら、ふとそんなことを考えてみたりもする。

 

インクラインドの終点には展望台もあり、サントス港を一望することができる。サントスは外海に面した港ではなく、入り組んだ湾の中に位置する。眼前に広がるブラジル最大の貿易港では、外海へと繋がる水路を巨大な貨物船が往来しているのが見える。ブラジル経済の活気を実感できる。今回ブラジルを初めて訪れてみて、ブラジルはもはや発展途上国とは呼べないという印象を受けた。南米大陸の中にある「アメリカ合衆国」的国で、周囲のより貧しい国々から見れば、南米の1人勝ち国家として羨ましがられているに違いない。

 

モンチ・セハーのウェブサイトはこちら(但し、ポルトガル語のサイトです。)