アメリカ鉄道巡りR

フラッグスタッフ駅
Flagstaff Station

 

 

 

 


 

場所:アリゾナ州フラッグスタッフ

 

アリゾナを旅行するにあたって、北アリゾナ観光の拠点となるのがフラッグスタッフの町である。西に20マイル行けばグランドキャニオン観光の拠点であるウィリアムズがあり、東に30マイル行けばアリゾナ大隕石孔がある。北東に3時間少々行くとモニュメントバレーがあり、逆に南西に少し行くとセドナがある。北アリゾナをあちらこちらと旅行するなら、どうやってもフラッグスタッフは何度も通る。東西に走るI‐40号線と、南のフェニックスから延びてきているI‐17号線が繋がるポイントがフラッグスタッフであり、もっと昔は、シカゴからカンザス、オクラホマ、テキサス、ニューメキシコを経て、カリフォルニアはロサンゼルスまで繋がっている「ルート66」の中継点として栄えた。

 

物流の拠点でもあり、ユニオンパシフィック鉄道やサンタフェ鉄道所有のディーゼルカーが牽引するとても長い貨物列車群が何度も何度も通り過ぎて行く。時々、ワシントン界隈でもお馴染みのCSX(今のアメリカブッシュ政権のスノー財務長官が昔CEOをやっていたとか)の車両も見かける。面白いのは、トレーラーの上に、タイヤ付きのコンテナを幾つも載せた貨物列車が走っていることだ。これもよくよく考えれば当たり前のことで、このコンテナをトラックで1台1台運送するのはコストが高い。長距離を走れば運転手が疲れて事故を起こす可能性だって高い。

 

フラッグスタッフ自体も魅力的な町だと思う。つい先日バルセロナ水泳世界選手権男子平泳ぎで世界新記録で優勝した北島選手をはじめ、日本の競泳チームが合宿を張るのはこの町にあるノーザンアリゾナ大学(NAU)である。市の南部にキャンパスがあり、線路の南側一帯は学生街の雰囲気であり、北側一帯は古くからの商業地域や住宅地になっている。市街を見下ろす西方の丘の上にはローウェル天文台がある。冥王星を発見した天文台として有名だ。今はフラッグスタッフが町として発展して、市街地の夜の灯りが眩しくなったため、天体観測はこことは別の場所で行なわれているらしいが、ローウェル天文台の立地はコミュニティへのアウトリーチ活動や子供への課外教育プログラムにとても適している。余裕があれば、日中のツアーの他に夜の天体観測プログラムにも参加してみるとよいと思う。

 

こんな魅力的な町であるが、ふらっと訪れた場合に最初に問題になるのは宿泊をどうするかだと思う。ボクたちのアリゾナ家族旅行では、目玉となる宿泊地では2泊するのにそこそこ贅沢していたため、フラッグスタッフの宿泊は単なる中継点としてしか考えていなくて予め予約していかなかった。普段の自動車の旅の経験から、ハイウェイを走っている間に観光案内センターでモーテルのディスカウントクーポンばかりがセットになった小冊子をもらい、それを元にして携帯で電話をかけ、宿泊予定地のモーテル/ホテルを決めていた。ところが、飛行機で着いたフェニックスから、フラッグスタッフまでの約2時間の行程で、休憩エリアは3ヶ所ほどあったが、どこにもこの小冊子が置いてなくて、そのままフラッグスタッフ市内に入ってしまった。

 

こうなったら目指すのは観光案内センターしかない。時々見かける看板を頼りにセンターを目指したところ、なんとここの観光案内センターは、アムトラックのフラッグスタッフ駅の駅舎と兼用になっていた。なるほど賢い選択だと思った。また、同じ駅舎の中には「ハーツ(Hertz)」レンタカーの事務所もあり、ここを拠点にして北アリゾナの観光コースを巡ることもできるわけだ。さっそくディスカウントクーポンの冊子と周辺の地図、観光スポットのパンフレットなどをどっさり仕入れて車に戻り、モーテルを決めて携帯で予約した。駅舎前を線路と平行して走っているルート66を東に少し行ったところにあるモーテルだ。そこに向かう途中、道路横に蒸気機関車の野外展示を見かけた。フィラデルフィアのボールドウィン社製造の機関車で、フラッグスタッフ周辺の森林から木材を切り出して運送するのに活躍した機関車らしい。

 

観光案内センターはとても立地に恵まれている。その町の中心となるような駅の建物の中に入っているのだから当然といえば当然でもある。ルート66を挟んだ北側には「オールドダウンタウン」と呼ばれる観光商業エリアで、ギフトショップが軒を連ねる。線路の南側は学生向けのファッショナブルなレストランやホビーショップが多い。駅の構内の駐車場に車を止めて、これらのスポットを観光することができるのである。

 

(2003年8月6日)